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さらば青春の光(DVD)

『さらば青春の光(DVD)』

フランク・ロダム(監督)

[label: ユニバーサル/1973]

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ロックを聴いたからって、答えがあるなんて思うな

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文:久保憲司

 ロック・ファンなら絶対観なければならない映画、それは『さらば青春の光』。
 60年代にイギリスを席巻したモッズというヤング・カルチャーにどっぷりと浸った青年が大人になっていく物語です。
 何度観ても感動します。というか、あの感動のラストを観ると、また最初を観たくなるのです。もう永遠と。
 オチを言っていいのか、どうか悩みますが、最後に主人公は全部納得するんだと思います。“こういうのが人生だ”と、だからバカらしいから、全部捨てて、大人になるわけです。で、人生をやり直そうとするわけです。
 でも、この映画を観てて思うのは、またこの青年は同じことを繰り返すだろうなと思うわけです。
 だって、楽しいし、それが人生だし。
 歴史もそうですよね。モッズはヒッピーになり、ヒッピーはパンクとなり、パンクはアシッド・ハウスとなった。
 基本なんも変わってないです。
 成功と挫折を繰り返す。だから、この主人公は、くだらないと大人になることを決意するわけです。結局人生なんてどれも一緒なんだから、映画の出だしで主人公がこんな人間には絶対成らないぞと嫌っていた親や、会社の上司や、くだらない友達みたいに成ろうと思うのです。
 でも、やっぱり、また時間が経てば、挑戦していくんだと思うんです。かっこいい人間になろうと。そして、ごちゃごちゃして、もう嫌だー、死んでやろうと思うわけです。でも、また振返ると、人生って、こんなものか、死ぬなんてもったいないな、適当に生きてやろうと思うわけです。でも、ぐだぐだ生きていると、いやいや、こんなのダメだ、頑張ろうという気になって……人間って言うのはこれを死ぬまでやっていくのです。
 『さらば青春の光』というよりは青春はいつまでも追っかけてくるなって、感じです。
 『さらば青春の光』を書いたザ・フーのピート・タウンゼントの『トミー』以降のテーマというのは、すべてこれなんですよね。結論なんてない、だから、ロック・スターに救いを求めようとするな、俺もお前も結局の所一緒なんだ。ロックとはもがき苦しみながら、踊るもんなんだ。ロックを聴いたからって、答えがあるなんて思うな。
 ウッドストックに50万もの人が集まって世の中を変えれるんじゃないかと思った世代、そして、世の中を変えれるんじゃないかと思った世代の挫折を完全に体験したアーティストの叫びです。
 そんなアーティストの青年時代を振返りながら、当時自分たちを支えてくれたモッズの青年に、自分の思いを告白した物語。
 人生なんてこんなものなんだ。だから楽しく生きろよと言っているような気がしてならないのです。だから、この映画を見終わったら、また最初を見たくなるのです。

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