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ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ(DVD)

『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ(DVD)』

サム・テイラー=ウッド(監督)

[label: Happinet/2011年]

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ジョン・レノンのザ・ビートルズ前夜、そしてロックンロール

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文:久保憲司

 『TELSTAR』はロック業界のダメな面を確認するためにいい映画だと思うのですが、ロックンロールっていいなと思わせてくれるのが、ジョン・レノンのザ・ビートルズ前夜を描いただけで、ロックンロールって、こんなにもよかったのかと思わせてくれる作品が『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』です。
 正確に書くとジョン・レノンの11歳から17歳までの出来事です。
 物語では、11歳は幼過ぎるので、17歳の1年の出来事に変えていますが、映画に出てくるエピソードはすべて本当です。
 ジョンは11歳の時にお母さんにファッツ・ドミノの“エイント・ザッツ・ア・シェイム”を教えてもらっているんです。
 そのシーンが出てくるんですが、凄くいいんですよ。監督がよくわかっているなと思うのが、ジョンがギターが上手くなっていくのが、スムーズに弾けるようになるんじゃなく、グルーヴィーになっていくという感じで描いているんです。
 監督はサム・ティラー・ウッドというイギリスの有名な現代アートの作家なんですけど、ロックンロールをよくわかっているなとびっくりしました。
 サム・テイラー・ウッド、女性なのに。おっとこれは女性差別ですね。
 でも、日本人の監督で、ロックンロールの本当の意味を分かっている監督なんかいるんですかね。
 しかも、リヴァプールの港町に新しい音楽が入ってくる感じの描き方とかもよく分かっているなと思うんです。30年後にイギリスにハウス・ミュージックが入ってきた、あの感じと同じ、最新の音楽という感じで描いているんです。
 それをお母さんに教えてもらっているジョンがなんとも微笑ましいのです。
 この感じを観るだけでも、この映画を観る価値があると思います。
 ジョンのお母さんは、あとでいうヒッピー・ママとか、レイヴァーとか、そんな人だったんだろうなと思います。
 そんな人に育てられたら、世界一のロックンロール・バンドのリーダーに成るのは当たり前かもしれません。
 そして、もちろん、この映画の基本テーマはひとりの少年が大人になっていく物語なんですけど。でも、そのバックグラウドにはしっかりとしたポピュラー・ミュージックという芸術はどういうものか、完全にわかっている監督が描いているから、使い古されたテーマが、輝いて見えるんだと思います。
 ロック・ファンには必見の映画です。

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