漆黒のグルーヴと艶やかなヴォーカルを
J・ディラ~フライング・ロータス以降なスロウ・ファンク・ビートと、ヴィクター・ディプレ〜ディアンジェロあたりを彷彿とさせる艶やかなヴォーカル……それはまさに和製チル・アウト・ソウルの最高峰というべき内容でしょう。作詞・作曲、アレンジ、プロデュース、ヴォーカル、演奏全てを自身で手がける山内将輝のプロジェクト、マーテルのサード・アルバム(本作では幾人かの参加ミュージシャンもあり)。2005年にはスペイン、バルセロナの〈Sonar〉にも正式招待され、ミックス・マスター・モリスやレイ・ハラカミなど、国内外のアーティストたちからもそのライヴは高い評価を受けている。本作でも、スペーシーなスロウ・コズミック・ファンクから、柔らかなチルアウト・ダウンテンポ、エロティックなダウンビートまで、その歌声はすべて彼のものへと染めてしまうほどの“色”を持って音そのものを包んで行く。そして本作のハイライトは、やはり日本語詩で制作された“Inochi”だろう。祈りにも似た、命をたたえる、その歌詞は311以降のこの国でどのように響くのだろうか。
“Inochi”(『FINDING & SEARCHING』収録)