シンセ・ウェイヴ/インディ・ロックとダンス・カルチャーを結ぶ新機軸
DJカルチャーのおもしろさには、年代も畑もまったく違ったサウンドたちがDJたちの手によってミックスされ新たな音楽として生まれ変わるという、縦軸も横軸も無くしてしまったというのがひとつある。そしてインターネットの広大の情報の海のなかでは、DJカルチャーというタームのなかにいない人々も、もはや過去のDJカルチャー以上に、そういった動きが複雑怪奇に広がっている。こうしたなかで、いわゆる80年代のエレポップを内包する現在のインディ・ロック的な流れから初期のハウスやテクノへと接続し、さらにチルウェイヴ的なバリアリックな多幸感をミックスして展開しているのが、この〈100% Silk〉と言えるのではないだろうか。レーベルを代表するアーティストでもあるLA・ヴァンパイアズとして活動するアマンダ・ブラウンとその夫、ブリット・ブラウンによって運営されているレーベルで、ミニマル、ドローン、ダブ、アンビエントなどを展開する〈Not Not Fun〉のサブ・レーベルとしてはじまり、現在ではほぼ“ハウス・ミュージック”のレーベルへとそのサウンドを変えている。本作はレーベルのその手のサウンドを集めたコンピ。グローファイ/チルウェイヴものに接続する、そのライトな感覚はいわゆる本流のテクノ/ハウスとも違った新たな感覚がある。割とディープ・ミニマルで閉じてしまったダンス・シーンのへの揺り戻しというのもあるだろうし、誤解でしかないと思うけど、オルタナなロック感と言いますか、インディ・ロック的な部分からのアプローチもあり、で、またLA、んでもってこの“白い”バレアリック感を聴いていると、2000年代中ごろのニュー・ディスコ(いわゆるディスコ・ダブ)/ニュー・バレアリック系の早くもリヴァイヴァルなんじゃないかななんて思うのは考え過ぎ……ですよね。