8年ぶりの復帰作。下田法晴が改めて語ったSILENT POETSとDUB。
下田法晴のソロユニットであるサイレントポエツが、8年振りにシーン再浮上を果たす。内容は前作『SUN』を解体し、再構築した『ANOTHER TRIP from SUN』。同時に『SUN』のダブ/再編集アルバム『SUN alternative mix edition』の2枚を発表する。
下田「この8年の間、DJやコンピレーションの選曲など、音楽活動はしていたんですが、なかなか新作には取りかかれませんでした。それは正直に言えば『SUN』の出来に納得いかなかったからなんです。サイレント・ポエッツが僕ひとりになってから初めての作品で、幸いなことにDJ YELLOWなど海外のアーティストとコラボレーションしました。パリへ渡って制作する中で、ある程度の変化は予想していて、期待していた部分も大きかったんですが、僕自身が予期していた音楽とは違う方向性のものになってしまった。自分が思うようにできなかったことが引っかかり、結局時間だけが経ってしまいました」
サイレント・ポエツの音楽の根幹にはダブという音楽がある。それには制作する音楽家はもちろん、エンジニアの采配も出来映えには大きく影響するものだ。
下田「音楽的にひっかかっていた最大の要因は、DJ YELLOWが選んだエンジニアとの相性でした。サイレント・ポエツの音楽的な基盤は、やはりダブなんです。このアルバムに決定的に足りなかったのはダブ的要素でした。エンジニアの方は大変優秀な方でした。それは間違いないし、トータルの音質はとてもクオリティの高いものだと思います。ただ、自分が求めていたダブ的なセンスは持ち合わせていませんでした。それは説明して理解されるものではなく、耳に、感覚に染み付いてるようなものですから。限られた時間の中で共通する方向性を探り合い、着地点を見つけるしかありませんでした。」
なかなか訪れない転機は、なんと今年になって急に訪れたという。
下田「やりたいけど、なかなか手に着かない。そんなモヤモヤした気持ちが続いていました。2年くらい前から、少しづつではあるけれど、制作も再開していました。しかし、作ってはやり直しの連続で。その間、グラフィックデザイナーとしての仕事や東日本大震災があったりして、また中止してしまったんです。でも、今年は新しい作品を作ろうと決めていたら、偶然春先にアルバム『FIRM ROOTS』(96年)や『TO COME…』(99年)などでエンジニアを担当していただいた渡辺省二郎さんからFACEBOOKを通して連絡いただいたんです。『最近、なにやってんの?』みたいな感じで(笑)。プライベートで連絡を取るような感じもなく、電話番号も知らなかったので、本当に10年くらい振りでした。実は新作の構想がある程度できあがったら、サウンドエンジニアは省二郎さんにお願いしようと決めていたので、そんな思いが伝わったのかと驚きましたね(笑)」
8年できなかった音楽制作が一気に進んだというから、SNSというのも捨てたものではない。春に渡辺と再開を果たし、11月に2枚の作品を発表するのだから、その後の進行はスムーズそのものと言える。
下田「近況を話し合う中で、省二郎さんから『なんかやってないの?』と言われて『いやぁ、まさにこれから』と返したんですが、『時間ある時に、何かやろうよ』と声を掛けていただいて。もう本当にすごいタイミングでしたね。その時、フッと『SUN』のダブを作ることを相談したんです。8年間の燻っていた思いをここで晴らせるんじゃないかと。」
また、好機に乗じて、自らの新レーベルを設立。ようやく風向きが変わった。
下田「これまでいろんな意味でレーベルやリリースに関して疑問を持つことや、不信感などあって、これもまたトラウマになってると言っても良い状態でした。それならマイペースに自分でコントロールできるレーベルを起こして発表しようと。関係者の皆様に教えていただきながら進めましたけど、なかなか大変ですね(苦笑)」
2枚同時に発売となると、説明がなかなかややこしい(失礼)。その制作意図と経緯を聞いてみた。
下田「すべてのデータを省二郎さんのスタジオに持って行き、とにかくオリジナルの存在は無視して、思いっきりダブにしたいと伝えミックスしてもらいました。音質は言うまでもなく、ボーカルも省き、構成もかなり変わっています。そうして出来上がったのが『ANOTHER TRIP from SUN』。そういう意味では、まったく新しい作品になりました。そういう変容もダブの魅力です。それから『SUN alternative mix edition』は、当初、廃盤になっている8年前のオリジナル『SUN』のデジタルリマスターの再発という事で進めていたんですが、途中でこっちもオリジナルと違った面白い内容にしたいと思い、新ダブミックスを中心に構成し直していって、結局オリジナルテイクは3曲しか残りませんでした。結果的には内容の違いを説明するのがきわめて難しい二種類のダブ・アルバムができてしまった訳です。そうして完成したものを更にイギリスへ持って行き、エイミー・ワインハウスなどを手掛けるエンジニアのスチュアート・ホークスにマスタリングしてもらいました。タイミングから制作過程の流れまで完璧で、8年間抱えていたモヤモヤが一気にぶっ飛びました(笑)。もうスッキリした気分で新作に取りかかれます」
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静寂が漂いながらも、しっかりしたリズムアレンジが印象的な『ANOTHER TRIP from SUN』。時に静かな森の中へ、またある時は朝焼けの広がる都市の路上へ、連れ出してくれる。インストロメンタルで空間を感じるゆえ、リスナーを旅に連れていってくれるような音楽だ。『SUN』は8年の時を経て、最終的な完成を迎えた。完成直後とはいえ、次回作は何年も待たされては困ります。
下田「2年前に制作を再開し、やり直しながら作った曲の中には、新しいビジョンの骨格となるような楽曲もある。それを軸として、来年には完成させようと考えています。その前に『ANOTHER TRIP from SUN』を発表したのには、もうひとつ理由があって。8年間というブランクはさすがに大きいので、改めてサイレント・ポエッツを認識してもらおうという気持ちもあるんです。まだ聴いたことがない人の感想を含めて、少し楽しみにしているんですよね」
また、今後はライブの予定もあるのだとか。加えて、毎回なにが起こるかわからない、リトルテンポのSEIJI“BIGBIRD”とのDJユニット MINTOSでの活動も楽しみだ。
下田「ライブは省二郎さんが生でダブミックスをして、僕は少しエッセンスを足すくらいです。DJしているのと見た目は変わらないかもしれません。少しづつお話もいただいているので、それが新作にも影響すると思います。また、MINTOSでもオファーをいただいています。主にレゲエやスカをかけます。やっぱり現場で求められるのはパーティミュージック。自分の曲は少しストイックすぎるので、DJでかけることはほとんどありません。でも、それではサイレント・ポエツのイメージで遊びに来てくれたお客さんにちょっと申し訳ない。だから、新作ではラフなダンスミュージック的な側面も出そうと考えています」