12人の後藤まりこと出会える
後藤まりこがソロとして2枚目のフルアルバム「m@u」をリリースした。ファーストアルバム「299792458」を聞いたとき、ミドリのイメージと違った、彼女のかわいらしさを見たように思った。ポップでキュートなメロディと歌詞。いわゆる恋愛ソングではないのだが、恋がしたくなるような軽やかなリズムに新しい後藤まりこの音楽があった。
そして今作「m@u」で、後藤まりこはさらなる新世界へ進んだように感じた。AxSxEとのバンド・サウンドに加えてKovas、Serph、スガダイロー、HARCOとのコラボレーション曲が収録されていることは、もちろん理由のひとつだと思うが、それをまとめる後藤まりこ自身にも進化が見られる。ラップを披露している「4月6日」、スガダイローとの即興曲「だいろーちゃんとまりこちゃん」など、彼女の音楽の作り方にマニュアルはない。エレクトロニカでもジャズでも、間違いなくそれぞれの曲に“後藤まりこらしさ”があふれているのに、12曲とも別人のように思える。少女のようで、大人の女性の色気もあり、ときには強さも感じられる。演じているのか、それともすべて本当の後藤まりこなのか。真の後藤まりこがどこにいるのかは、わからない。ただ、乙女の心情を吐き出すように歌う彼女の音楽には、真実しかないように思う。