ゲスの極み乙女。
演者とオーディエンスがひとつになった日
こんなにもオーディエンスと演者が一体になるライブがあるだろうか。
会場が暗くなり、鳴り出した手拍子。前のほうだけではない。後方まで、手拍子をしてない人を探すほうが難しい。まだ始まってもいないのに、すでに中盤を迎えたように会場が温まっている。
待望のメジャー・デビュー・ミニ・アルバム「みんなノーマル」を引っさげたワンマンツアーラストとなるリキッドルーム2days。最終日は「モニエは悲しむ」からスタートした。「餅ガール」では、餅が配られ、「みんな!」「ノーマルじゃない!」のコール&レスポンスから始まる「ノーマルアタマ」では、メンバーの似顔絵をかぶったダンサーが登場し、会場を盛り上げた。最後は「みんなノーマル」の大合唱。オーディエンスは、何度もゲスの極み乙女。のライブを見たことがある人ばかりなのだろうか? そう思わせるほどに、盛り上がるポイントをわかっている。
川谷の「まだまだ踊れますか?」の掛け声とともに始まった「ぷらっくパレード」。畳み掛けるような歌詞と音色の気持ちよさを強調するような歌詞。この緩急が彼らの曲のおもしろいところだ。曲の終わりにはちゃんMARIの「コポゥ!」コール。そして休日課長に対するオーディエンスからの「キモイ」コール。あれだけ熱くなっていた会場が和んだ瞬間だった。
MCを挟んだ6曲目は8月6日リリースの初のシングル「猟奇的なキスを私にして」。少し狂った恋愛模様を軽やかな音とともに歌いあげる。つづく「ハツミ」は、切なさをまとった川谷の歌声がドスンと突き刺さってくるようだった。
2回目のMCで、川谷が長崎から両親が見に来ていることを報告。「祖父が国語の先生で日本語に厳しい人で、そんなぼくが“ゲスの極み乙女”というバンド名をつけたことをすごく悲しんでいたと思うんですよ。だけど最近、CDを聞いてみたいと言ってくれて」と、うれしいエピソードも。歌っているときの川谷とは違う、微笑ましい姿が印象的だった。
「サカナの心」、「パラレルスペック」、「ホワイトワルツ」、「momoe」、「song3」を立て続けに演奏し、エアコンでは到底冷やせないほど会場の気温が上昇! 「ホワイトワルツ」の途中ではほな・いこかによる「ゲスの4箇条」が伝授され、4箇条目の「ゲスであること」は当然のようにオーディエンスから声があがっていた。カオス状態のオーディエンスとそれを煽るように音を鳴らす演者の呼吸はピッタリと合っている。
その後、チケットの整理番号を当選番号とした抽選会が行なわれ、当選した2名のお客さんをステージにあげるというサプライズが。選ばれた2名の女性をゲストに迎えて「いこかなでしこ」と「jajaumasan」を演奏。さらにオーディエンスと演者の距離が縮まっていく。「ユレルカレル」そして「キラーボール」で本編はラスト。ハイジャンプの連続。そして川谷がフロアに下りてきて、さらにオーディエンスをヒートアップさせる。ひとりとして、手をあげていない人なんていない。前列から後列まで、どこを切り取っても盛り上がりはピークに達していた。
アンコールは、新曲から始まり「ドレスを脱げ」では、最後の力を振り絞るかのように全身全霊が込められた手拍子とハイジャンプが続く。今日のライブいち気温が上昇し、大盛況のまま終了した。
演者もオーディエンスも完全燃焼。お互いの気持ちがしっかりと通じ合っていることが伝わってきたツアーファイナルだった。