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サム・プレコップ(Sam Prekop)-The Sea and Cake

サム・プレコップ(Sam Prekop)-The Sea and Cake

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コンセプトを決めてそれに向かっていくことよりも、作品を通じてコンセプトに辿り着きたい。

── サムさん、こんにちは。

── まず、今はどこに? 辺りの様子を、説明してもらえますか?

サムこんにちは。今自宅のキッチンでラップトップを開きながら、君の質問の答えを考えているところだよ。さっきまで暗室と現像についての文章を読んでいたから、今朝子供達と行った地元の温室で撮影した写真の事が頭から離れない。もうすぐ夏も終わるけど、すごく充実した毎日だった。

── 一昨年の来日、去年はフジロック、連続の来日になりますが、今年の夏はどう過ごしましたか?

サムそうだなあ、写真集を作りたくてその事を考えながら過ごしてた。でもまだまだ撮影をがんばらないとダメだね。夏は子供と過ごす時間が多いから面倒をみながら同時に出来る創作活動と言えば、写真が一番なんだ。外出する事が多くて、公園に行ったり、まだ訪れたことのない場所でランチしたり、被写体は無限大なんだ。

── ベースのエリック(・クラリッジ)さんが怪我で来日できないことが残念なのですが、その後の様子は如何ですか?

サムそうなんだよ、エリックは手根管症候群を発症してベースを弾けなくなったんだ。特にツアーでは、毎晩演奏しないとダメだからきついみたいだ。だから今は絵画の制作に集中しているみたいで、精力的に活動しているようだよ。けれど彼は日本に来て演奏するのが大好きだから今回参加してもらえなくて本当に残念だよ。
今は彼の代わりにダグ・マッカム(Tortoise / Brokeback)がベースで入ってくれて、すごくいい感じだ。

── The Sea and Cakeとソロ名義での作品に取り組む姿勢の違いを、どう認識し、今現在、それらがどのように育ってきたと思いますか?

サム僕にとってThe Sea and Cakeは、真の意味での実験的なバンドだ。音楽スタイルは常に実験的ってわけじゃないけれど、実践的な意味では常にそうだ。僕のソロ・プロジェクトでやったシンセサイザーを使った最新のインストゥルメンタル作品なんかと比べると、圧倒的な違いは、バンドにはヴォーカルがあると言う事。ヴォーカルがあるとないのとではアプローチの仕方が全く変わってくるし、そういう意味合いにおいて、このバンドを僕のヴォーカルを発揮する場所として捉えてる。いつもヴォーカルが中心という訳じゃないけれど、曲を書く時は常にヴォーカルのイメージがあるんだ。僕はいわゆる典型的な歌手じゃないし、けっこうゆるい感じで歌ってるから、それがバンドの実験的な要素に貢献しているのかもしれないね。
僕個人のプロジェクトであるシンセサイザーを使った音楽への興味は、僕のミュージシャンとしての幅をすごく広げたと思うし、その影響がバンドにも出てると思う。アルバム「Runner」は僕がモジュラー・シンセサイザーから着想したアイデアを中心に制作されていて、想いを超えた面白いアイデアがいっぱい出て来て制作に大いに役立った。
もう2年くらいThe Sea and Cakeのアルバム制作はしてないからそろそろ何かやりたいなと考えて興奮している。
今までと違ったすごく面白い事が出来るような予感がしているんだ。
でもスタジオに入ってみるまで何も予想出来ないんだけどね。早く始めたいよ。
※The Sea and Cake「Runner」(Thrill Jockey Records / Thrill-310)

── ここ最近興味があるアートや音楽、映画、本は?

サムここ数ヶ月はずっと写真撮影ばっかりしてたから朝から晩まで様々な写真集を眺めていた。ロバート・アダムズ、ウィリアム・エグルストン、スティーブン・ショア、ウォーカー・エバンス、ポール・ストランドなど、昔から好きな写真家の作品を見ていた。最近ジョージア州出身のマーク・スタインマッツという写真家について知ったんだけど、彼は昨年「Paris in My Time」という美しい本を出版したんだ。これには刺激を受けたよ。
音楽なら、アレクシス・ズンバの「A Lament for Epirus 1926-1928」というレコードをずっと聞いているよ。怖いぐらいに美しい作品だ。
※「Paris in My Time」(Nazraeli Press / isbn: 9781590053744)
※「A Lament for Epirus 1926-1928」(Angry Mom Records / AMA-004LP)

── あなたのご家族についてあらためて紹介していただけますか?

サムパートナーのベッティーナとのあいだに、6歳のヘレンとフランシスという双子がいる。子供を持つようになるとは予想してなかったんだけど、彼等が僕の人生の一部となって毎日がワイルドで素晴らしい冒険のようになったよ。二人と多くの時間を過ごせて幸運に思ってるし、彼らから多くを学ばせてもらってる。
今は子供たちとの時間が優先されてしまうから作品制作に費やす時間も限られてくるけれど、それだけ貴重な体験をさせてもらっているから残念とは思っていないんだ。
※ベッティーナ・リチャーズ:サムのパートナーであり、スリル・ジョッキー・レコーズのオーナー

── お父さんマーティン・プレコップ(写真家)や弟たちハンク(家具デザイナー)、ザック(画家)の作品から影響を受けることはありましたか?

サムうーん、どうかなあ。でもやっぱり父と息子でしか共有出来ない感覚を持っているのかもしれない。父は今でも毎日作品制作をしていて、それは僕にとって大きな刺激となっている。あと一番下の弟のザックの画家としてのキャリアには感心しているし、誇りに思ってる。

── 子供たちの成長を見守りながら自分自身の子供時代の記憶が蘇ることはありますか?

サム特にこんな記憶が蘇ったというような経験はないけれど、自分がどう育てられたかという事は、僕が子供達に何を教えて何を見せるかという行動に自然と繋がっていると思う。美術はすごく大事だし、音楽も、あとは食物や自然、、、とにかく自分が本能的に良いと思う物を子供達にも与えてあげたいと思っている。

── 映像作家ティム・サットンのデビュー映画「Pavilion」のフィルムスコアを手掛けましたね。このコラボレーションはどんな経緯で実現したのですか?

サム「Pavilion」の数年前にティムが一人のファンとして僕にアプローチしてくれたんだ。僕の2枚目のソロアルバムに含まれる曲のミュージック・ヴィデオを作りたいという申し出だった。その数年後にもThe Sea and Cakeの「Weekend」という曲のヴィデオを制作してくれていたから、彼と仕事をするのは初めてじゃなかった。
そんな彼から突然、映画のスコアを手がけてみる気はないかと連絡があり、経験もなかったから迷ったんだけど、映画を見たらやれそうだと、それで引き受けたんだ。かなり挑戦しがいのあるプロジェクトだったけれど、完成した作品をすごく誇りに思っているよ。ほとんどを自宅のスタジオで録音し自由にやれて、ティムもかなり関わりながら音を創り上げていった。
方法としては、僕が印象に残った場面を抜き出して、即興で音をつけるというような形。映像に対して僕の中から湧き出てくる情感を音楽にした。全ては使われなかったけれど、レコードには入ってるよ。最終的な編集の判断はティムに任せたけれど、とても説得力のあるいいスコアになったと思ってる。
※「Pavilion」
※「Pavilion」soundtrack: Factory 25
※ The Sea and Cake「Weekend」PV

── あと、去年のChicago Film Archives Media Mixer でアレクサンダー・スチュワートの作品”What I Want”のサウンドを担当しましたね。このコラボレーションを振り返ってみて、どんな部分が面白かったですか?

サム映像作品のサウンドを手がけてみて思ったのは、自分が表現したいものだけに集中する個人的な作品と違って、それ以外の様々な要素をカヴァーする必要があり、より広がりが求められるという事。そういう意味ではすごく貴重な体験をさせてもらったと感じている。自分意外の人間のアイデアも反映させなくてはいけないからね。バンドで音楽を作るのと似てなくもないけれど、やっぱり大きく異なるかも。映像と音のコラボレーションだからね。
※Chicago Film Archives Media Mixer

── 3年前?のNeon Marshmallowのイヴェントで、映像を見ながらアナログのモジュラー・シンセサイザーで音を作っていましたが、あれは即興だったんですよね。ちなみにあの時の映像何ですか?

サムそう、あれは即興だったんだよ。でもライブの前には念入りに準備をしていて、僕は個人的に”patch”と呼んでいる”音の固まり”みたいなものを用意していた。パフォーマンスごとに新しい楽器を発明するみたいなもんだよ。最近そのやり方が気に入ってる。パフォーマンスを興味深い有機的なものにしながらも、ちゃんと音楽として成立させるための僕の戦略なんだ。リスクもあるけど、挑戦しがいがあるし楽しい。ぜひ近々に日本でもやってみたいよ!
今までこういうパフォーマンスは12回くらいやってるけど、映画とのコラボレーションはなかったかも。Neon Marshmallowでコラボレーションしたアニメは60年代後期~70年代初期のロバート・ブリアという人の作品なんだ。それまで彼の作品を知らなかったんだけれど、とても気に入ったよ。素晴らしい作品だと思う。
※Neon Marshmallow
※ロバート・ブリア(Robert Breer): アニメーション作家、画家、彫刻家

── あのモジュラー・シンセサイザーはどのようにして見つけたのですか?

サムもう10-15年かけて僕のけっこう大きなモジュラー・シンセサイザーをいじって改造してる。本当に少しづつだけどね。この楽器のすごいところは常に変化していて、決して完成しないということ。つまり何にでもなれるんだ。だから僕にとって永遠に魅力的であり同時にちょっと困ってしまう時もある。ずっと飽きることはないないと思うよ。

── ところで、あなたが大好きな動物は?

サム好きなのは鳥かな。シカゴ動物園にはすごく美しいキリンがいるんだ。色彩も素晴らしいし、ゆっくりとした優雅な動きが魅力的なんだよ。

── 言葉のあるソングライティングとサウンド・メイキング、あなたのなかでどのように組み立てられ出来上がって行くのでしょうか?

サム歌詞は、言葉がどのような音を出すかと、声にした時にどのように聞こえるかと言う事と深く関わっている。なので、ほとんどの場合、直感的に歌詞を決めてる。最終的な編集や変更はより左脳的な作業ではあるけど、そんな場合でも、紙に書くといいけれど音にしてしっくりこないと、直感でベストな言葉を探す。論理的に説明出来るようなものではないけれどね。でも、曲作りはすごく職人的な作業だと思ってる。自分なりの合格点やバランス、足し算引き算があって、ちょうどいい具合を見極める判断力は、経験と共に培われるのでないかと思っている。

── The Sea and Cakeについて、既に次のアルバムのレコーディングなど予定や、今後の方向性について思うところはありますか?

サムジョンが最近スタジオを引っ越したので、そこが落ち着いたらこの秋か冬ぐらいにレコーディングを始めたいと考えてる。前もって方向性を決めたくないから、スタジオに入ってからどんなインスピレーションが湧いてくるかを大切にしたいんだ。コンセプトを決めてそれに向かっていくことよりも、作品を通じてコンセプトに辿り着きたい。待ちきれないよ。あとは、2015年の頭にソロの方でシンセサイザーのレコードを出すのを楽しみにしてる。ある映画のサントラとして書いた曲に新しく曲を書き加えて一つの作品にした。タイトルは「The Republic」。シカゴのアーティスト、デビッド・ハートの作った映画のタイトルなんだ。今年の春にニューヨークで展示された大きなインスタレーションの一部として制作された映画だ。
※ デビッド・ハート(David Hartt)



LIQUIDROOM 10th ANNIVERSARY

デビューアルバムから20周年のThe Sea and Cake、デビュー10周年のトクマルシューゴ。ダブルアニバーサリーの今年、恵比寿で初共演!

The Sea and Cake/トクマルシューゴ
opening act:jan and naomi

11月12日(水曜日)オープン/スタート:18:30/19:30
会場:LIQUIDROOM(渋谷区東3-16-6 / 03-5464-0800)
前売り(発売中):5,500円(LIQUIDROOM店頭のみ5,000円)[税込・ドリンクチャージ別 / 整理番号付]
前売り取り扱い箇所:チケットぴあ[234-006]、ローソンチケット [71180]、イープラス、LIQUIDROOM
※公演詳細はコチラから

【 The Sea and Cake Japan Tour 】
▽京都公演[京都・丸太町]
11月14日(金曜日)オープン/スタート:19:00/19:30
α-STATION & METRO W Anniversary Special LIVE !!
会場:METRO(京都市左京区川端丸太町下ル下堤町82 恵美須ビルBF / 075-752-4765)
前売り(10月4日(土曜日)発売)/当日券:4,500円/5,000円[共に税込・ドリンクチャージ別]
前売り取り扱い箇所:チケットぴあ[244-479]、ローソンチケット[57007]、イープラス
TOTAL INFO:METRO 075-752-4765 

▽福岡公演[福岡・大名]
11月16日(日曜日)オープン/スタート:18:00/19:00
COMMON GROUND presents
会場:ROOMS(福岡市中央区大名2丁目1-50 大名ONOビル3F / 092-751-0075)
前売り(10月4日(土曜日)発売)/当日券:5,000円/5,500円[共に税込・ドリンクチャージ別 / 整理番号付]
前売り取り扱い箇所:チケットぴあ[244-571]、ローソンチケット [89467]
※下記にて先行予約あり
COMMON GROUND:9月18日(木曜日)~10月3日(金曜日)
LOVE FM:10月3日(金曜日)
TOTAL INFO:COMMON GROUND 0977-84-3838 / ROOMS

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ジョン・マッケンタイア(John McEntire)-The Sea and Cakeのインタビューはコチラから

アーチャー・プルウィット(Archer Prewitt)-The Sea and Cakeのインタビューはコチラから
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