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きたぐにのはる

『きたぐにのはる』

LIKKLE MAI

[label: MK Starliner / MK Muzik/2014]

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この国の地面から力強く、芽吹き生まれる音。

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text by 河村祐介

ここ数年、民謡や音頭といったものがこの国のポップ・ミュージックのなかで見直されている。その感覚は多彩でいて、単なる「カヴァー」や「サンプリング」とは違ったディープな結びつきで新たな音楽を奏でている。もちろん、その先達としてソウル・フラワー・ユニオンの名前は、間違いなく、そこにはある。彼らが日本の音楽と、ロックやアイリッシュ・トラッドとを結びつけて新たなポップ・ミュージックとしてプレゼンしたように、様々なスタイルで同じ様なことが生まれている。リクルマイの新作『きたぐにはる』は、同時多発的に出てきているそうした動きのひとつとも言えるかもしれない。彼女は自身の武器であるレゲエとこうした”日本の歌”を表現する。その音楽性は、インタヴューを読むと、反原発デモなどでの、前述のソウル・フラワー周辺との関わり、また彼女自身、岩手県宮古出身ということもあり、募金やさまざまな現地での活動、なによりもそこでの人々との出会いによって見出されたのだという。大雑把に言えば、東日本大震災以降の人々との出会いから生まれたのだ。
本作には「秋田音頭」、「ドドサイ節」(岩手県)、「相馬盆唄」(福島県)といった東北地方各地の民謡、さらには明治、大正期に活躍した演歌師、添田唖蝉坊(そえだあぜんぼう)の「ノンキ節」といった楽曲を、レゲエによってカヴァー、さらにはこれらの楽曲と同一線上にある、まっすぐな日本語で歌われる唯一のオリジナルにして、表題曲の「きたぐにのはる」によって構成されている。”プナーニ”など、ファンデーション・リディムの上で歌われる”歌”はまるで、地面からのエネルギーをその喉を通して発するようにエネルギッシュに音として振りまかれる。借り物感というのはそこにはない。自らの適任としてこの世に生まれ出たかのように、生き生きとしている。その音を聴くにつけ、ソロ・シンガーとして、新たなポイントへとたどり着いたことが非常によくわかる。日本の歌、そしてレゲエという要素をつなぎ合わせたのだが、同時にアフロ・ポップスのようでもある。つまるところ、どこにもなこの島国でしか生まれえないポップ・ミュージックのひとつのスタイルを作り出してしまったのだと言えるだろう。

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