ÁSGEIR JAPAN TOUR 2015
アイスランドの新星が恵比寿に舞い降りた、 Ásgeir単独ライブ
平日の夜なのに超満員のリキッド。酸素がうすく息がしづらいと感じるくらい大勢の観客に囲まれた。他の国だともっと大きなハコでしか見られないアーティストだよね、と隣のカップルが話している。ホステス・ウィークエンダー、フジロックと昨年は2度も来日してくれたが単独は特別だ。“Björk、Sigur Rós、múm…を輩出しているアイスランドはレイキャヴィーク出身の22歳天才シンガー”とキャッチコピーをつけると、彼の楽曲を知らない音楽ファンも聴いてみたくなるだろう。実際、私も音楽好きの友人から「Ásgeirっていうすごい新人が出てきたから聴いてみて!」とレコメンドをもらって、了解程度に再生ボタンを押してみてびっくりした人のひとりだった。
いつもより長く感じられた開演時間までそわそわしながら過ごし、Ásgeirがステージに姿を見せた。単独ライブに興奮気味のファンを手なずけるように、静かに演奏に入っていく。全身の感覚を研ぎ澄まして音に身を委ね、目を閉じる。満員のリキッドルームから回想の世界へ引き込まれていく。
(ここから回想)360度見渡せるだだっ広い土地の真ん中にポツンと立って地平線を見つめる。空気は乾燥していて冷たいのだけど、身体は暖かくて、いい感じに温度にメリハリがあって気持ちが良い。ここからどこまでも行けそうな開放感とちょっぴりの孤独感。自分がゆるやかに高揚していくのがわかる。
彼の音楽は、聴く者各々に情景が浮かぶような世界観なのだけれど、アーティスティックというよりは素朴で、どこか懐かしい気持ちになる。『Lupin Intrigue』は澄んでいて綺麗で、『Going Home』は底から沸き上がる熱を感じた。『King and Cross』で音と一体となって揺れたと思ったら、あっという間に終わってしまった。楽しみにしていたことって終わるのも一瞬だなと、つくづく思う。
外に出たら予想以上に冷たくて。普段の自分なら生音を聴いたアーティストの曲をヘッドフォンで聴きながら帰るなんてことしないのだけれど、その晩の恵比寿の冬空がÁsgeirの曲にマッチしていたものだから。家に着くまで繰り返しアルバムを聴きながら帰ったのだった。