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SAYONARA

『SAYONARA』

SAKEROCK

[label: カクバリズム/2015]

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最大で、最後の輝きが詰まった作品

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text by 中山夏美

SAKEROCKを待っていた。昨年ベストアルバムが出てから。ずっと、ずっと待っていた。
最後に彼らのライブを見たのは、ベースの田中馨が抜けた後、2012年のカクバリズムの10周年記念イベントのときだった。星野源、浜野謙太、伊藤大地の3人にキセルやレキシなどのゲストを迎え、オーケストラのようなライブを見せた新生SAKEROCKの誕生に心が踊ったのを覚えている。これから、いろんな形のライブが見られるのだと思った。だけど、彼ら3人があれから集まることはなかった。
個々の活動が増えたおかげで、3人を目にする機会が多くなったし、活躍の幅が広がることに喜びも感じていた。それでもSAKEROCKが再び3人で活動してくれることを待っていた矢先、まさかの解散報告。
そして4月8日にラストアルバム「SAYONARA」が発売された。
4年半ぶりのアルバムは、田中と2002年に脱退したキーボードの野村卓史を含めたオリジナルメンバーで制作している。
カクバリズムのブログで角張渉が「1stのようなアルバムが完成しました」というように、とても最後だとは思えないフレッシュさだ。
軽快なリズムとポップな音たちが新生活の始まりを伝えるような 1 曲目の「Emerald Music」。陽気な曲すぎて、とても悲しい気持ちになんてなれない。SAKEROCKが帰ってきたことを全身でうれしいと感じられる。続く「Memories」も「One Tone」も、楽しくて楽しくて、感傷に浸っている暇なんてない。星野が笑いながら、マリンバを叩く姿が想像できる。浜野が隣で真剣な顔つきでトロンボーンを鳴らしている姿を思うと、なぜか笑える。
そんなことを思い浮かべながら聞く次曲の「Ballad」。浜野のトロンボーンがゆったりと音を流していく。辛い! SAKEROCK がいなくなってしまう! 再び深い悲しみに襲われる。しかし「Orion」では、また陽気な音を奏でて、気持ちを踊らせる。そんな浮き沈みを繰り返しながら、ラスト 10曲目の「SAYONARA」にたどり着く。
野村のキーボードがひとつひとつ丁寧に音を鳴らす。急に始まる浜野の力強いトロンボーン。その音に合わせるように、星野、伊藤、田中の音が重なり合っていく。5人がそれぞれを称えるように、そして我々リスナーに感謝を伝えるように鳴らす、いち音、いち音が体に響き渡る。
この「SAYONARA」は、ぜひともMVと合わせて聞いてほしい。タイトルで堂々と別れを告げているくせに、彼らはそのMVのなかで非常に楽しそうなのだ。
心底音楽が好きで、演奏することが大好きで、SAKEROCKとしてやってきた15年は、楽しくて仕方なかったんじゃないだろうか。勝手にそんなことを想像して、胸が熱くなった。
もうこの先、新しいSAKEROCKには会えない。だけど、彼らの最大の輝きが詰まったこのアルバムは、今後ずっと、ずっと生き続けていく音楽になるはずだ。

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