横浜出身のスケーター仲間で結成した、ハイセンスなバンド。
音楽はハイセンス、さらにライヴ・パフォーマンスのカッコ良さにも魅了されるバンド、それがSuchmos(サチモス)だ。まさに新しい時代を切り開いていく音楽だなと思う。最初にハマったのは「Fallin’」、そしてバンドの友人が撮ったというミュージック・ヴィデオを観て、彼らの感性の良さを確信した。待望の1stアルバム『THE BAY』は、メンバーが自信作と話すのに納得の内容になっている。
バンド名はルイ・アームストロングの愛称“サッチモ”から引用したというが、R&B、ジャズ、ヒップホップからの影響はもとより、ロック要素も十分に感じさせる懐の深さ。ジャミロクワイなど、アシッド・ジャズを想起させる部分もある。曲作りの際に、「最小公倍数で糸口を見つけることにみんな結構躍起になっている」という話には、なるほど、と思うし、その一方で間奏やサビ前の数小節などで各パートが披露するキラーフレーズも聴き逃せない。
まずは華のあるヴォーカリスト、YONCE。立ち振る舞いはもちろん、ちょっとしたフレーズやスキャットからも男の色気が香り、ダンスや佇まいまで絵になるフロントマン。そこへ押しの強い個性的なベースラインで男っぽさ全開のHSUのベース(SANABAGUNのメンバーでもある)、クエスト・ラヴとクリス・デイヴの大ファンで、Suchmosのクールなビートを叩き出し、スネアやハイハットなどの細やかな音遣いまでがツボなOKのドラムというリズム隊、グルーヴの効いたTAIKINGのカッティング・ギター、フックやコーラス的効果を加えていくKCEEのDJらの魅力が加わる。さらに鍵盤で多彩な音色を加える櫻打泰平(SANABAGUN)のサポートもあり、緻密ながらもダイナミズムも含んだ絶妙なアンサンブルを展開していく。
既にヒット中の「YMM」が代表曲になっているが、ライヴに欠かせないディストーションギターの効いたナンバー「Burn」やラッパーの呂布をフィーチュアした「GIRL」、恋人よりも付き合いの長いマスターベーションをテーマにしたアップテンポの「Armstrong」、“マインドはかなりロック”と話すだけに、世の中に対して物申す「Alright」のような骨太の曲もあり、全曲キラーチューンといえる充実ぶり。YONCEとHSUという2人の作詞の個性も豊かで、シニカルな比喩を使った歌詞も脳裏に響く。
横浜と茅ヶ崎をホームタウンとするスケーター仲間が始めたバンドとあって、海岸線を爆音でかけながらドライブしたくなる一方で、グラス片手に聴きたくなるお洒落感もある。でもその根底に垣間見える闘争心こそ、彼らの一番の魅力だろう。今夏、必聴の傑作だ。