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田我流 × GOMA

田我流 × GOMA

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「お互いに対するリスペクトがあるからこそ、分かり合えるものがあるんだと思う」(GOMA)

ジャンルを超えた支持を集めるラッパー、田我流を中心とするバンド・プロジェクトである田我流とカイザーソゼ。昨年は初のスタジオ・アルバムを発表して話題となったこのバンドが恵比寿LIQUIDROOMでツーマンを行う。田我流がその相手に選んだのはGOMA & The Jungle Rhythm Section。ディジュリドゥ奏者であるGOMAと3人の打楽器奏者が奏でる強靭なグルーヴが各地の野外フェスで熱狂的に迎えられており、田我流としても念願のツーマンとなる。映画「サウダーヂ」に主演するなど近年の音楽シーンにおいて唯一無二の存在感を発揮してきた田我流。2009年、交通事故によって高次脳機能障害の症状を発症し、その復活の記録がドキュメンタリー映画「フラッシュバックメモリーズ3D」によって描かれたGOMA。2016年3月18日、2人の男の人生がLIQUIDROOMで重なり合う。

── お2人はいつごろからのお知り合いなんですか?

田我流 GOMAさんとは結構前から知り合いな気がするんですよ。

GOMA いつだったかは覚えてないけど、ちょくちょく会うんだよね。

田我流 フェスで一緒になることが多いんですよ。ここ(LIQUIDROOM)でもよく会いますよね。

GOMA そうそう。たまたま同じライヴを観にいったタイミングで会ったり。

── お互いの活動にはどんな印象を持ってます?

田我流 樹海にいくときによくGOMAさんのCDを聴いてるんですよ。

GOMA 山梨っぽいなあ(笑)。

田我流 本栖湖の近くに樹海を見下ろせる場所があるんですけど、そこに登る途中、よくGOMAさんのCDを聴いてます。あと、(長野県松本市で行われている)『りんご音楽祭』にGOMAさんがソロで出たことがあったんですけど、そのときの演奏が凄かった。体内に何かがグルグル渦巻いて、最終的に外に出ていくような感じ。あのソロ・ライヴは本当にびっくりしましたね。音楽を聴いて久々にうおっ!となった。

GOMA そうなんだ。ディジュリドゥ自体がもともと外で吹くものだからね、野外の環境には合ってるんだと思う。

── GOMAさんとしてはソロで演奏するときとバンドでやるときはだいぶ意識も違うものなんですか。

GOMA 全然別モノですね。ソロで吹くときはお客さんも含めて周りの環境と一体化できるように吹くんです。

田我流 ディジュリドゥを使って世界と一体化する?

GOMA そうそう。一本吹きは一本吹きで目指してる世界があって、それは音楽というより海で聴く波の音のようなものなんです。

田我流 GOMAさんのライヴって普通のポップ・ミュージックに比べて大きな展開があるわけでもないし、展開があったとしてもそこまでが長いじゃないですか。だから、ライヴを観ているうちにいろんなことを考えるんですよね。自分のなかにこんなにもいろんな考えがあったのかって驚かされるし、オレみたいに俗にまみれた人間からするとデトックスされる気がする(笑)。あと、GOMAさんって演奏してるときに親指と人差し指を結んでリングを作りますよね。あれってどういう意味があるんですか?

GOMA 呼吸をコントロールできるようにリハビリのためヨガをやってるんだけど、ああやって輪を作るとパワーが出やすいんだよね。たぶん事故の後からだと思うんだけど、自然とああなっちゃう。やっぱり演奏をしているとどうしても身体を動かしたくなるしね。もともとこういうカルチャーに入ったきっかけがダンスだから。

田我流 B-BOYだったんですか?

GOMA うん、もともとは……B-BOYスタイル(笑)。

田我流 大阪のラッパーとかあちこちで言われるんですよ。『今度GOMAちゃんとやるんだろ?』って。昔からの繋がりなんでしょうね。

── ちなみに、今回のツーマンはもともと田我流さんからのラヴコールで実現したそうですね。

田我流 LIQUIDROOMでやらせてもらうにあたって、ツーマンの候補をいろいろ考えてたんですね。その打ち合わせをウチの社長がやってたら、たまたまそこにGOMAさんが現れたことがあったそうで……そういう縁ってすごく重要な気がするんですよ。去年も一度このツーマンの話があったんですけど、そのときは実現しなかった。それで今回こそGOMAさんのバンドとやろうと。

── 田我流さんご自身、GOMA & The Jungle Rhythm Sectionのライヴはご覧になってるんですよね?

田我流 観てますね。映画(『フラッシュバックメモリーズ3D』)も観ました。ただ、今回はこちらからのラヴコールというより、不思議な感じでこうなった(笑)。もちろんGOMA & The Jungle Rhythm Sectionとしてのライヴを観てみたいという気持ちは前提としてあるうえで、自然とこうなった……そうとしか言えないですね。

GOMA うん、縁としか言えないよね。

田我流 『あの人と一緒にやってみたい』という思いはもちろん重要なことだけど、最近はそれよりも縁のほうが大事な気がしてるんですよ。縁のなかには自分が必要としているものとか次の日に必要になるかもしれない何かが凝縮されてると思うし、すごく大切なことだと思ってて。自分で手に入れようと思っても手に入るものじゃないから。

GOMA (田我流とは)話していてもフィーリングが自然と合うんですよ。事故の後は誰かと会ってもなかなかその人のことを覚えられないんだけど、それでも(田我流のことは)覚えちゃう。それだけ合ってるということなんだと思う。あと、今回のライヴを観る人のなかには『フラッシュバックメモリーズ3D』と(田我流が主演した)『サウダーヂ』の両方を観てる人もいるだろうし、お互いの世界観を重ね合わせる人もいるんじゃないかと思ってて。

── そうした人間的な面に加えて、音楽家/表現者としてシンパシーを感じる部分もあるんじゃないかと思うんですが。

GOMA グルーヴを重要視してる点は一緒なのかもしれない。(EVISBEATS feat. 田我流の)“ゆれる”のリリックなんかも何気ない日常から出てきたものなんだろうし、聴いていると生活がそのまま見えてくる。変に気取ってないから入りやすいんですよね。PVもめちゃおもろいしな(笑)。

── 田我流さんはどうですか? シンパシーを感じる部分というのは。

GOMA 樹海ってところ?(笑)

田我流 うんうん、GOMAさんはやっぱり樹海ですねえ(笑)。樹海も昼間は本当に美しい場所だし、チルな感じなんですよね。でも、ひとたび夜になるとそこにはいろんなものが潜んでる。GOMAさんはいつお会いしても穏やかな感じですけど、音楽には凄いものがいろいろと渦巻いているんですよね。あと、GOMAさんとはたくさんの時間をかけて会話を重ねてきたわけじゃないけど、なぜかGOMAさんのことを多く知っている気がしていて。僕が『フラッシュバックメモリーズ3D』を観ているということもあるんだろうけど、やっぱり『合う』んでしょうね。

GOMA お互いに対するリスペクトがあるからこそ、分かり合えるものがあるんだと思う。

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── ところで、ふだんツーマンでやるときって対バンのことを意識するものなんですか?

田我流 意識しなきゃいけないということは多分にありますね。僕らはだいぶ音楽性の違うバンドと一緒になることもありますし。そういうときは初対面の人の前で音楽をやってる感覚になるし、自分の演奏をするまでに時間がかかっちゃうこともある。

GOMA 最近はほとんどツーマンでやってないし、事故の後はライヴ自体頻繁にできてないんですよね。何が起きるか分からないからやってもワンマンばっかりだし、The Jungle Rhythm Sectionとしてやるのも半年ぶりぐらい。ひとりでやる場合は終わる時間さえ誰かが合図を出してくれればノリだけでできるけど、バンドの場合は曲の構成もあるし、下準備が必要になるんですよ。だからThe Jungle Rhythm Sectionとしてやるときは1本1本かなり意識して臨まないといけないんです。

── 田我流さんの場合はカイザーソゼというバンド・プロジェクトとして活動を始めたのが昨年からですよね。ライヴを重ねるごとに手応えを感じてきてます?

田我流 1MC1DJでやるときはそんなに『キメ』ってないんですよ。でも、バンドの場合、みんなの演奏がパッとキマッたときはメンバーみんなと何か共通の感覚みたいなものが生まれるし、みんなで同じところに向かっていけてるときは最高ですよね。ただ、まだまだ不慣れなんで、ひとつひとつのライヴを重ねながら、ですよね。

GOMA 今まで何本ぐらいやってるの?

田我流 まだそんなにやってないですね。6、7本ぐらいかな。人数が多いのでなかなかできなくて……スタジオには割と定期的に入ってるんですけどね。まあ、集まって飲んでる感じです(笑)。練習後にみんなで飲むようなことは1MC1DJの場合はないんで、みんなとの飲みが楽しくて(笑)。

GOMA いいね、そういうのは大事。

── GOMAさんにとってThe Jungle Rhythm Sectionのメンバーはどういう存在なんですか。

GOMA あのバンドでやることで音楽の感覚が蘇ってくるし、あの人たちは僕の身体に染み付いている感覚を呼び覚ます鍵を持ってるんです。あのリズムを聴くと身体が自然と反応する。音楽をやるにしても高次脳機能障害である脳の特性を考えながらやらないといけないし、お医者さんからは『身体の記憶を上手に使えるようになりなさい』と言われていて。

── 身体の記憶?

GOMA 通常はお箸を渡されれば何も考えずに使えるじゃないですか。そのレベルまで身体に入ってるものがあれば自然とやれるようになるんです。バンドの演奏にしてもスタジオで練習を重ねるなかで、そういう感覚が呼び起こされていく。身体に残っているグルーヴをどうやって解放していくか。その意味でもだいぶフィジカルな音楽になってるんです。

田我流 音楽をやるうえでひとつ目標にしてることがあって、もっと呼吸をするように音楽を作れるようになりたいんです。『朝起きて、メシ食って、寝る』というサイクルのなかに普通に音楽を作るという行為を組み込みたいし、楽しい・辛いというところも超えたくて。GOMAさんが言ってた『フィジカルな音楽』というのは、僕なりに解釈すると『呼吸』のようなものなのかもしれない。

GOMA ラップにしても呼吸に乗せて言葉を紡いでいくわけで、(ディジュリドゥと)近いところがあるのかもね。

田我流 確かに。そうかもしれませんね。

MARY JOY RECORDINGS 肥後 補足しますと、カイザーソゼとThe Jungle Rhythm Sectionの共通点でいうと、どちらもPAが内田直之さん・照明が畠中さんで、スタッフが一緒なんですよね。

GOMA そっか、じゃあその日は流れでできるわけだ。

田我流 そうなんですよね、その意味でもすごく自然で。だから、自分としては『The Jungle Rhythm Sectionとのツーマン、どうですか?』と聞かれてもあまりに自然すぎて落ち着いちゃってるところがあって(笑)。

GOMA 温かい環境でできそうだよね。気持ちのいいグルーヴが生まれるんじゃないかな。

── 当日は一緒に演奏する予定もあるんですか?

GOMA 2人で何かやりたいね。

田我流 ケツのほうでやってみましょうか。2人でどこまでいけるか。アクシデント的な感じでもいいんじゃないですか。楽しそうだし、やってみましょう。

GOMA 絶対大丈夫だよ。呼吸のグルーヴでやろう。

田我流 樹海を思いながら(笑)。

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フォース充填!! GOMA & The Jungle Rhythm Section、2016初出陣。田我流、念願のGOMA & The Jungle Rhythm Sectionとの2マン・ライブ、いよいよ実現! 燃焼し循環する活力の現場、生の最前線へようこそ。

日時:2016年3月18日(金曜日)開場/開演 19:00/20:00
前売券:3,300円[税込・1ドリンク代(500円)別途]
※前売券は下記にて絶賛販売中!
チケットぴあ[Pコード 288-500]、ローソンチケット[Lコード 71808]、イープラス[http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002180268P0030001]、ディスクユニオン(新宿日本のロックインディーズ館/新宿クラブミュージックショップ/下北沢クラブミュージックショップ/渋谷クラブミュージックショップ/お茶の水駅前店)、Jazzy Sport Music Shop Tokyo、JET SET TOKYO、虎子食堂、リキッドルーム

★ライヴ動画含む公演詳細はコチラから。

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