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Fracture

『Fracture』

jan and naomi

[label: cutting edge/2018]

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ここではないどこか、静謐で、なぜか懐かしい情景へ

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text by山田 佳緒里

Jan(GREAT3,Jan Urila Sas)とNaomiによるデュオ、jan and naomi(ヤンアンドナオミ)。都内を中心とした定期的なライヴ活動の他に、フジロックや海外のフェスへの出演、映画音楽の担当など、幅広い活動でじわじわと注目を集めている彼らから、約2年ぶりに届けられた新譜は9曲入りのフル・アルバム。

 

 必要な分だけが的確に選ばれた音数とシンプルな展開で構成される音像が、フォークとエレクトロとノイズを優しくたゆたいながら独特の浮遊感と共に心地良く響く。時に互いを補完し合うように絡み合う、Naomiの甘く中性的なヴォーカルとJanのハスキーで深みのあるヴォーカルは、同じ濃度で溶け合いながら密やかに芯に迫ってくる。水槽に入れた水がその空間を透明に隙間なく埋めていくような感覚で、潜在意識の深いところに染み込むような音の粒子。内省的でありつつも聴き手の想像力を刺激する余白を残した歌詞(主に英詞)も相まって、隠喩や物語という存在自体が逆説的にリアルを炙り出し浮き上がらせるような手法で、コンテンポラリーかつ普遍的な美しさと強度を持ったメロディーが描くそのサウンドスケープは眩しく煌きながら、コントラストとして生々しさと力強さも携えているようだ。

 

    この音源を再生した瞬間に始まる、ミュージック・ジャーニー。それは真夜中なのか、はたまた白夜かデイドリーミングか。具体的な時間帯も場所も問わないが、是非誘われて欲しい。エキサイティングする都市の喧騒から逃れ、ここではないどこか、静謐で、なぜか懐かしい情景へ。

 

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