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POLY LIFE MULTI SOUL

『POLY LIFE MULTI SOUL』

cero

[label: カクバリズム/2018]

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POLY LIFE MULTI SOULという快楽の鼓動

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text by BOY 奥冨直人

2010年代の日本音楽シーンの中でも、一際独立した存在感と独創的なサウンドを奏でているバンド・ceroが、2015年を代表する一枚となった前作「Obscure Ride」以来、約3年振りとなる新作「POLY LIFE MULTI SOUL」を発表した。

この3年間の中で、全国各地のフェス会場からお茶の間まで、幅広いキャパシティーの支持と注目を集めた彼ら。今作は、その期待値を軽快に跳び越える快作となっている。

白昼夢的快楽の[Modern Steps]から始まり、リード曲[魚の骨 鳥の羽根]から着々とヒートアップしていく。エキゾチックな音色ながらも、彼ららしい日本語詞が飛び交いドメスティックな印象も自然と交じり合っていくから不思議だ。
ファンクジャズの要素とJ-POP的解釈が共存し、エモーションの解放へ向かう楽曲は、何れも肌に優しく響く様に丁寧でいてダイナミック。実験的でいて建設的。
その感度は、前作からの期間でより研ぎ澄まされている。

アフリカンやアシッドも混同されたスモーキーで多面性を持ったサウンドは、まるで世界一周の旅で出会った音楽を繋ぎ合わせた広大な音景を感じてしまう。
こんなにも複雑なメロディーにギミックの凝ったアンサンブルなのに、ポップスへ昇華させる力を兼ねているのがこのバンドの恐ろしいところでもあるが、
全編を通しVo,高城の柔軟に表情を変える様な歌声や各パート・楽曲の巧妙なバランス、そこから感じられる音楽への追及心・探求心に胸掴まれた。
様々なリスナー層を虜にする彼らは、聴き手へ自由な入り口と解釈出来る余地を自ずと提供している様に思えるのだ。
現在の彼らへの支持は、そういった音楽的キャパの広さと比例していると、今作を聴いて深く納得した。

「POLY LIFE MULTI SOUL」 2018年を振り返る時、パッと頭に浮かぶ一作だろう。
ceroが生み出す快楽音の園は、これからもまだまだ広がりを見せていくに違いない。

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