FEATURE

REVIEW

なんて素晴らしき世界

『なんて素晴らしき世界』

Tempalay

[label: SPACE SHOWER NETWORKS INC./2018]

Amazon

秒針のない世界へいざなう、Tempalayという過去と未来の谷間

twitter facebook

text by BOY 奥冨直人

不思議で仕方ないバンドだ。

 

Tempalayとの出会いは、遡る事4年前。
Dr.藤本夏樹とは、私の過去のバイト先の先輩後輩関係であり、いつからか音楽の話をする仲に。
その後、「新しいバンドを始めた」と聞いたのがTempalayだった。
当時は今よりもローファイやサーフ、所謂インディーロックという印象が残っていて、
どちらかと言えば懐古的な空気を纏っていた様に覚えている。
その頃から、楽曲アレンジとメンバーの癖の強さと、Gt&Vo.小原が生み出す捻くれた快感のメロディーセンスの輪郭は見えていたが、リリースの度、その輪郭はよりはっきりと力強いものへ変化していった。

 

 

近年は国内外フェスの出演も絶えず続き、既に異質なポジションに位置するTempalayだが、
最新EP”なんて素晴らしき世界‟では、もうコンパスでは測れない程の位置まで踏み込んでしまっている。
小原の歌詞とメロディーのとろけあいは、若かりし桜井和寿を彷彿させる程のよりナチュラルな統合へ、藤本のドラムは楽曲をアトラクションの様なコミカルなグルーヴへと導く。
そして、長いサポート期間を経て正式メンバーとなったAAAMYYYの存在が、
今作の吹っ切れ具合にグンとポジティヴなパワーを加えている。
特に、リード曲【どうしよう】でのクライマックスに登場する彼女のフレーズは、楽曲に更なる奥行きとタイムスリップ感を与え、サビを繰り返す展開に対し電子音の色付けを重ねる事で、リスナーをTempalayの世界の奥深くまで丁寧に連れていってくれるのだ。
同曲を韓国のヒップホップグループ・BTS(防弾少年団)がSNSで取り上げる等、予想のつかない範囲で拡大している。

 

 

また、ラストを飾る【カンガルーも考えている】では、予想出来ないヴォーカルのエフェクトに
‟カンガルーは考えている 袋の中はとてもきゅうくつ‟という未来からのメッセージが語られ、
【SONIC WAVE】では”実際問題どんくらい?一過性のムーブ‟と歌う姿は、
何処か現状のフォーマット化されつつある社会の音楽環境への訴えの様にも聞こえる。
Tempalayがこれまでに築いた環境は、ダイレクトな音楽性のみならずプレイヤーの思考や発想があっての事だなと思えた。

 

 

今作はEPとしてのリリースだが、インスト曲2曲含めても十分にアルバムレベルのボリューム感である。
それ程に、今作に収録された1曲1曲の独立性と鮮彩さには、瞬きと溜息を繰り返すばかりだ。
過去も未来も経験してしまった後の音楽の様にも感じる。

Tempalayの音楽が、これからも僕らを素晴らしき世界へ導いてくれると確信出来る1枚。

 

 

Release Info
Tempalay
『なんて素晴らしき世界』
2018年9月26日発売
全8曲入り
PECF-3208
価格:2000円(税込)

 

********************

 

LIVE INFORMATION
『なんて素晴らしきツアー』
2018/10/20 (土) 札幌 / BESSIE HALL ※ゲスト有り(OPEN 18:00 / START 18:30)
2018/11/2 (金) 仙台 / spaceZero ※ゲスト有り(OPEN 18:30 / START 19:00)
2018/11/9 (金) 福岡 / the voodoo lounge ※ゲスト有り(OPEN 18:30 / START 19:00)
2018/11/11 (日) 京都 / 磔磔 ※ゲスト有り(OPEN 17:00 / START 17:30)
2018/12/5 (水) 大阪 / Shangri-La ※ワンマン(OPEN 19:00 / START 19:30)
2018/12/6 (木) 名古屋 / upset ※ワンマン(OPEN 19:00 / START 19:30)
2018/12/11 (火) 東京 / LIQUIDROOM ※ワンマン(OPEN 18:30 / START 19:30)

https://www.liquidroom.net/schedule/tempalay20181211

 

 

RECENT REVIEW

REVIEW TOP

RECENT REVIEW

REVIEW TOP