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<br>KATA presents BLESS<br/>んoon x jiga (GAI SUNYA from yahyel + KOHEI KAMOTO from DYGL)


KATA presents BLESS
んoon x jiga (GAI SUNYA from yahyel + KOHEI KAMOTO from DYGL)

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Text by 小川智宏

Live Photo by 細川比呂志

 

リキッドルーム2FのギャラリースペースKATAが開催する新イベント「BLESS」。その記念すべき第一回は、んoonとjigaによるカップリングショーだ。

 

まずステージに登場したjigaは、Gai Sunyaことyahyelの池貝峻とDYGLの嘉本康平によるプロジェクト。この日が初めてのパフォーマンスである。3ピース編成で、池貝はラップトップやシーケンサー、嘉本はギター、そしてドラムには山口美代子。青い光がステージを照らすなか、「246」の破壊的なビートとノイズが空気を震わせていく。

 

 

 

その轟音がやむと、池貝の美しいヴォーカルが入ってくる。描き出されるのは激情的なサイケデリア。宇宙か深海を漂うようなメロディと歌を、ドラムとギターの肉体的な響きが現実に引き戻す。アートとして完成したフォルムに自らヒビを入れていくようなパフォーマンスは、シンプルにいってとてつもなくエモーショナルだ。

 

 

時折激しく体を折りながらリズムを取る池貝、対照的に淡々とギターを見つめて弦を弾く嘉本。その構図はどこかシュールでもあるが、その出音とステージから放たれる熱量は思いっきりロック。そのロック性は山口のドラムから生まれている部分も多分にあるが、逆にいえば彼女をこのプロジェクトに引っ張り込んだことが、ふたりの意志を物語っているようにも思える。

 

 

「我々、jigaという新しいプロジェクトを始めました。覚えて帰ってくださいね」。そう言って演奏された最後の曲「feel」。それまでのムードから一転、夜明けのような壮大さを感じさせる楽曲で、そのスケール感がこのプロジェクトのポテンシャルを感じさせた。

 

jigaがもし「自我」という意味だとするなら、この音楽に表現されているのは表層と深層を行き来しながら引き裂かれる人格のようなものだ。シリアスでシンボリック、そしてどこまでも生身。彼らの次の展開が早くも気になった。

 

【jiga setlist】

  1. 246
  2. cry me a river
  3. 27
  4. 505
  5. feel

 

 

 

 

 

そして転換を経て、んoon。1曲目は「Amber」。リラクシンなアンサンブルとJCの柔らかな歌声が広がっていく。表面的には気持ちのいい音楽なのだが、その裏側では結構変なこと、というか気の利いた細かいことをやっているのがこのバンドである。ウエスのハープが見た目的にも音的にも目立つが、そのハープすらたまたまそこにあったみたいな感じで鳴らされているのがいい。

 

 

「日曜日の時間をありがとう」とフロアにカジュアルに語りかけるJC。気のおけない仲間と奏でるラウンジミュージックの面持ちなのに、というかだからこそ、出てくる音は過激なまでにボーダレスなミクスチャーになってしまうところがいい。切ない愛からダークな孤独まで、あるいは丑三つ時の誰にもいえない秘密から、お日様の下での友達とのお喋りまで。んoonの音楽は何気なく世界にメスを入れる。

 

「元気ですかー? 元気が一番」。相変わらずJCの言葉はユルいが、出てくる音はユルそうに見えてどこか一本芯が通っている。モダンジャズのようなベースとポストロック的なドラム、鍵盤のようなアタックの強い音を鳴らすハープ、その隙間を縫うように、あるいはアンサンブルを支えるようにしながら、耳に残るフレーズを残してくるキーボード。ギリギリのバランスで混在する音たちが、JCの歌によってひとつにまとまっていくのだ。

 

 

一方で「いよいよ人間がむきだされる」と歌う「Gum」ではヒリヒリとした感情がウエスのコーラスや優しげなベースによって穏やかに中和されていく。ミクスチャーとは中和である、と誰かが言ったかどうかは知らないが、そしてたぶん誰も言っていないが、混ぜるなら乳化して分子レベルで均一になるまで徹底的に混ぜろということかもしれない。その結果見たこともない色と感じたことのない味が生まれる。違和感に違和感が重なって、新たな視界が開けていく。

 

 

ループ感がくせになる「Suisei」、ムーディーなシンセとベースの音色が夜明けを連れてくる「Tokyo Family Restaurant」などを経て、本編ラストは「Freeway」。開放的なリズムがこの日何度目からの高揚をもたらした。そして鳴り止まない拍手に応えてのアンコールではループするハープのフレーズが印象的な「Summer Child」で最後のトリップ。恵比寿に異空間の風と無邪気な音楽的冒険を連れてきた2組の競演。強烈な記憶に残る一夜だった。

 

 

【んoon setlist】

  1. Amber
  2. Lumen
  3. Tragedy
  4. Custard
  5. Godot
  6. Gum
  7. Suisei
  8. Tokyo Family Restaurant
  9. Freeway
  10. Summer Child

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